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現地レポート

「晴れのち雨」を経験したコーチの“今” RSS

2017年3月29日 22時26分

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「JX-ENEOS 第30回都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会2017(以下、ジュニアオールスター2017)」は大会2日目が終了し、男女のベスト4が出揃った。

男子で、2年連続の準決勝進出を決めたのは新潟県。
しかし、その準々決勝は薄氷を踏む勝利だった。初の準決勝進出を狙う兵庫県に対し、ビハインドを負ったまま最終ピリオドの残り時間2分を切っていたのだ。
そこから逆転ができたのは、鍛えてきたディフェンスと、190cm前後のビッグマンを2人も擁する兵庫県に分があると思われていたリバウンドで踏ん張ることができたからだ。
新潟県の堀 里也コーチは、「最後の2分は子どもたちの力です。私は何もしていません」と言うが、同時に「今年のチームはアウトサイドからのシュートを見せ玉にして、実はセカンドチャンスで得点を取るチームを作ってきました」という、チーム作りの勝利とも言える。

タフなゲームを選手とともに戦った新潟県の堀 里也コーチ

新潟県は、前回大会で初優勝を果たしている。周囲の期待は”今年も”となるのだが、前回大会と同じコーチングスタッフが最初に集まったとき、一度だけその時の話をしたが、それ以降は「比較になる。今年のチームは今年のチーム」として、新たなチーム作りを始めた。
そこには自身が経験した“失敗例”があると、堀コーチは認める。

堀コーチは、今なお1校しか達成していない、秋田県立能代工業高校が「高校9冠」を成し遂げた翌年の主力メンバーだった。つまりは、日本人初のNBAプレイヤーの田臥 勇太選手(現:栃木ブレックス)の一年後輩。
「高校9冠を達成した翌年、私たちは無冠に終わりました。だからこのチームでも『今年も』ではなく、『今年は』の気持ちでやっています。子どもたちからしても、目の前にいい失敗例があるのだから、わかりやすいですよね」
堀コーチはそう言って笑うが、あのときの悔しさは生涯忘れることがないだろう。だからこそ、今を大切にするチーム作りを心がけている。

「自分たちが日本一になる」と強い意志を示した新潟県#4小川 敦也選手(右)

むろん、前回大会を経験したことで、参考にできることは参考にする。
たとえば、決勝トーナメントの1回戦が大会2日目の4試合目で、勝てば6試合目が2回戦となる。中1試合で、すぐにゲームをしなければいけないのだ。このタフなスケジュールを前回大会で経験している。
「タフなゲームで、難しくなるのはわかっていました。だから1回戦の福岡戦が終わったときに、選手たちには福岡戦の話は一切させず、次の兵庫戦に向けて何をすべきかを考えさせました(堀コーチ)」

実際には、選手たちは大一番と思っていた福岡戦にフォーカスしすぎて、準々決勝の兵庫戦にうまく入っていけなかったところもあった。競り合いの展開は、もちろん兵庫県の実力でもあるが、一方で、どこか新潟県もそれまでの“らしさ”が出せていなかったようにも見えた。
それでも堀コーチは、「兵庫県の試合も決して悪くはなかった」と言う――「勝ったからプランどおりということで……」と苦笑いを浮かべながら。

本音を言えば、負けが頭をよぎった瞬間もあっただろう。それでも、そのたびに今年の選手たちを信じ、「いや、まだいける」とベンチの前で自分を奮い立たせていたはずだ。
選手時代の失敗は、何も選手時代にだけ返せるものではない。むしろ、もっと大人になったときにこそ、「あの経験があったから、今はこう考えられるんです」と胸を張って言えるようになるものだ。

「今年の新潟県は小さいでしょう……まるで日本(代表)を象徴するかのようなチームです。そんなチームでもタフなゲームを勝つことができたのだから、このチームでまたセンターコートに立ちたいですね」

高校9冠を目の当たりにし、その後、無冠を経験したコーチはタフなゲームの翌日、どんな采配を見せてくれるのか。
明日、新潟県は準決勝を長崎県と対戦する。同じく過去に一度、ジュニアオールスターを制したことのあるチーム。それぞれの「今年は」が白熱したゲームを生むはずだ。

試合後、選手たちに次戦に向けた心構えを伝える堀コーチ(右)と、それを真剣に聞く新潟県の選手たち

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